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CIR Insights

2016年AAIR Forum に参加しました。

2016年AAIR Forum に参加しました。

(期間:2016年11月14~16日、場所:シドニー(豪州)、報告者:大野林太郎 IR室特任講師(IR担当))

 

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晴れ渡る空。澄み切った海。真っ白な砂浜。11月では考えられない、眩しいほどの真夏の日差し。そして、何故か窓一つない薄暗い部屋で講演を聴いている自分。まあ、「真っ白な砂浜」と言っても、そもそも海パン・ヤングでウジャウジャしている以上、混ざっても楽しめる要素は皆無と思われるが…。(もちろん、妬みなどこれっぽっちも含まれていない。)

今年のAAIR Forum(正式名称:Australasian Association of Institutional Research Forum)は豪州Sydneyで開催された。会場はCoogeeという地域にあるホテルで、海岸の近く、というよりは海岸の真上に位置しており、完全なリゾート地である。(正直、ワイシャツを着ているだけで、場違い感が半端なく、他の  滞在者からも若干不審な目で見られてしまう。南半球故の季節の反転は滞在中よりも日本に帰国したときの方が厳しかったが…。) 豪州・ニュージーランドの最近の流れを扱った講演がメインではあったものの、IRでの方向性や大学のあり方について、具体的な事例を基に話が紹介されたため、参考にできることも多かった。

例えば、豪州では従来の学期末に行われる評価アンケートによる学生調査(SES: Student Experience Survey)に加え、政府指導の下、卒業生に大学で培った能力が社会人としてどれほど役に立っているかを調べるGOS (Graduate Outcome Survey)と就職先の直属の上司に部下(卒業生)の能力・知識・対応力を評価してもらうESS (Employers Satisfaction Survey)が行われることになった。これらは2015年に実施が決まったばかりで、集計結果がまだ得られていないものの、それらの影響やどの様に反映させるべきかが議論された。また、よく知られている従来の授業評価アンケートに関しても、学期の早い段階で簡単なアンケート調査を行い、授業の改善につなげようとする新たな試みが紹介された。当然、豪州特有の事情に影響された議論もいくつかあり、ネットでアンケートが行われる故の回答率確保・その信憑性など、日本の大学とは違った焦点の講演も複数あった。(回答率確保のために学生に賞金を用意するのは、若干やり過ぎに思えたのは日本の考え方が染みついているから…であろうか?)

また、IR全般に関して、進化しすぎたテクノロジーに惑わされて、綺麗なグラフを量産する解析ソフトやリアルタイムの情報更新、経済的に効率的な外部委託などが大学で導入されたものの、そのおかげでデータが意味することを考えることを放棄してしまっているのではないか、と警鐘を鳴らす発表者もかなりの数いた。実際、最優秀講演やキーノート・スピーカー、パネル・ディスカッション他多数のセッションで、表向きどれほど効率がよく見える技術でも目的なく導入してしまえば宝の持ち腐れで、キーノート・スピーカーのOrmonde-James氏の言葉を借りるならば、「道具を持った馬鹿は所詮馬鹿である」。(ちなみに同氏のもう一つの好きな言葉「Rは正しい」だけはMathematica信者の自分ではちょっと頷けなかった…。)

重要なのはきちんと目標を見据えて、そこにたどり着くロードマップを構築することで、最新の技術であれ、数年前の技術であれ、正しいデータを基に正しい意思決定がなされれば、結局やり方はどうでも良い。そして、膨大なデータとそれを自由に閲覧可能な状態を準備しても、セキュリティー上問題があるだけでなく、却って混乱につながってしまう。そもそも人によっては得意とする考え方とそうでないものがあるので、解析を行う人がちゃんと準備してピンポイントで紹介すべきだ。等々、会場のコンセンサスとしては兎に角「なぜ」と言う理由・動機を明確にして手段は問わない雰囲気であった。

講演は恐ろしいほどフランクに行われて、本来は競争相手であるはずの大学に所属していても、講演者と聴衆はまるで身内のように振るまい、機密であってもおかしくない情報や手法、最近の問題などの情報が気軽に交換された。他にも大学の根本的な存在意義を考え直すべきである、とか、実利・学際的教育最優先で運営すべきである等、様々な議論があったが、やはり一番印象に残ったのはForum Dinnerで順次回された原住民の聖なる?棒?と会場から見えたスーパー・ムーンである。まあ、普段の月のサイズを覚えているわけでもないので、何が「スーパー」だったのかは正直わからなかったが、水平線に上がる月は記憶に新しい。

来年のAAIR Forumはまた11月上旬にAlice Springsで開催される予定で、GOSやESSの結果と解釈や更に進んだテクノロジーとの付き合い方などが興味の対象となるのではないかと思われる。いずれにせよ大変勉強になった。


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