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CIR Insights

gradSERU WorkshopおよびCSHE60周年記念カンファレンス参加報告

 

UC Berkeleyで11月15日に開催されたgradSERU Workshopと、11月16日、17日に同地で開催されたCSHE60周年記念カンファレンスNEW NATIONALISM & UNIVERSITIESにCIRの松河が参加してきました。今回はその報告をしたいと思います。

 

15日は日本で打ち合わせと2講目の授業を終えてから、仙台空港-成田空港を経てサンフランシスコ国際空港に移動しました。時差の関係でサンフランシスコに到着すると、再び15日の午前中に逆戻り。空港からはBARTにのってBerkeleyに移動しました。実はこれまで、サンフランシスコ市街へは所用で何度も行ったことがあるのですが、海を渡って対岸まで行くのは初めての経験でした。Downtown Berkeley駅で降りた後、一旦ホテルに立ち寄ってから、UC Berkeleyのキャンパスへ向かいました。この日のgradSERU Workshopの会場はキャンパスの中程にあるDwinell HallのRoom370でした。受付をすませて会場に入ると、主催者のJohn Douglass氏がいらっしゃったので、タイミングを見計らってご挨拶をしました。この日の参加者はUC Berkeley関係者を含め、US内の方が多い印象でしたが、日本からも東京大学、大阪大学、名古屋大学、広島大学などの方々が参加されており、各大学のgradSERUに対する関心がうかがえました。

 

Workshopは定刻通り午後2:00から始まりました。まず、ミネソタ大学Vice Provost & Dean of Grauate EducationのScott Lanyon氏から、開会の挨拶と、大学院教育が直面している問題についての話がありました。次にSERUコンソーシアムとgradSERUの調査デザインに関して、ミネソタ大学Office of Institutional ResearchのRonald Huesman氏とDaniel Jones-White氏から説明があり、さらに、最近のgradSERUの予備的な調査結果について、Daniel Jones-White氏、Scott Lanyon氏、ユトレヒト大学のMarijk van der Wende氏から報告がありました。報告の性質上、内容はここでは詳しく書くことはできませんが、かなり設問数が多いハードな調査であるため、現状では回答率はあまり高くないとのことでした。

 

しばらくの休憩を挟んだ後、「現代の大学院教育について我々は何を学ぶべきか」というテーマに沿って、4人程度のグループに分かれてディスカッションを行いました。私のテーブルでは、「大学院生の学業達成を阻む要因」について意見を出し合いました。学費の問題や学生のメンタルの問題など、どんどん意見交換が進む中、私も何か発言しないとと内心ヒヤヒヤしながら、会話が途切れたタイミングで、日本の大学院の学びは徒弟制的な側面があるが、アメリカでも同じような感じなのかと質問を投げかけました。すると、思いの外悪くない切り口だったようで、すでに出ていた学生のメンタルの問題などとも行き来したりしながら、話題が広がって行きました。ひとしきり議論が盛り上がった後、各テーブルの話題を代表者が報告し、それを司会者がとりまとめて、Workshopは終了しました。

 

この日はWorkshop後、大学のそばのチャイニーズレストランでJohn Douglass氏を囲んだ夕食会に招待いただきました。初対面の方と英語で会話し続けるのはなかなか大変でしたが、隣の席のフランスから来られた方に、ちょうど解禁日だったボージョレヌーボーの話をしたら、日本で関心が維持されていることに驚かれるなど、話題が盛り上がる場面もあり、楽しい時間を過ごすことができました。

 

翌日の16日は、朝9時から、New Nationalism & Universities -Global Perspective on Politics and Policy and the Future of Higher Education-と題した会議が始まりました。午前中は過去にUC BerkeleyのCSHEのVisiting Scholarだった方々によるセッションとなっており、ブラジルや南アフリカで工学系大学を卒業した学生の進路に関する研究や、南アフリカの高等教育における社会的正義の研究、学問の自由や価値を守ることの難しさや、チリにおける大学の入試制度などに関する報告がなされました。休憩を挟んで引き続き、アラスカ大学の地理的な苦労と戦略についての話題や、アメリカの公立大学が直面している状況、中国、日本、ロシアのGlobal Excellence Initiativeの比較などの報告がありました。午後は、John Douglass氏よりナショナリズムと大学の状況について位置付けが説明された後、Brexitが大学に及ぼす影響について、講演とパネルディスカッションが行われました。休憩を挟んだこの日最後のセッションは、トルコとハンガリーを題材とした学問の自由と大学の自治についてのパネルディスカッションでした。

 

会議2日目の17日も、前日の午後に引き続き、講演・パネルディスカッションの形式で会議が進行していきました。午前中は、ヨーロッパの高等教育の未来について、ブラジルと南アフリカにおけるポピュリズムと学生運動、プーチン時代のロシアの大学の3件、午後はトランプ時代のアメリカの大学、アジア特に日本と中国におけるナショナリズムと大学の2件について議論が行われ、2日間の会議は幕を閉じました。教育工学が専門の私にとって、所属する大学の枠を越えて、高等教育の諸問題を考える機会はそれほど多くなかったのですが、この2日間は、例えば、トルコでは政府に反抗した大学人がたくさん失職させられたなどの生々しい話題に触れることで、ナショナリズムと大学の関係というのは一人一人の研究者が常に意識しておくべき重要な事柄であることを認識する大変貴重な機会となりました。

 

報告者:教育評価分析センター 松河秀哉

 

 

 

 

 


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