2018年AIR Forum に参加しました。
2018年AIR Forum に参加しました。
(期間:2018年5月29日~6月1日、場所:オーランド(米国)、報告者:大野林太郎 IR室特任講師(IR担当))
米国、フロリダ州。「サンシャイン・ステート」という渾名からも連想される亜熱帯というよりは熱帯の気候。州都はジャクソンビル(人口:140万人弱)でもマイアミ(人口:560万人弱)でもなく人口36万人強のタラハシー(Tallahassee)。そして宇宙センターと某ネズミの某世界リゾートがあるオーランド。重要なのでもう一度:オーランドと言えばネズミ・リゾートと宇宙センター。
そして、今年5月末そのオーランドに行くことができた。
…ただし、AIR Forum 2018に参加するため…。
結果、全日程ホテルに缶詰。
まあ、ハリケーン・シーズンのため連日嵐で、外出したところ何もできなかっただろうが…。
Association for Institutional Researchは世界最大級のIR担当者の専門職団体であり、2018年の年次総会には800人以上もの関係者が集まった。キーノート2講演に加えパネル・ディスカッション、ディスカッション・グループ、通常講演等様々な形式で情報発信・交流が行われた。キーノートとパネル・ディスカッションは録画され、後に会員に提供、その他の講演に関しては成果をまとめた資料がそれぞれ公開されている。また、他の参加者とネットワーキングの機会も多く設けられており米国など多くの地域のIR担当者およびコンサルタント等と交流する場となっていた。ただし、メインのキーノート以外は多い時に20パラレル・セッションが並行して行われたため、全てを網羅することができなかったことが若干悔やまれる。
特に印象に残ったのはメイン・イベントの一つであったCathy O’Neil氏による “Weapons of Math Destruction”の題目で行われたキーノート講演であった。(数学による“大量破壊兵器”というオヤジギャ…言葉遊びが意外と的を射ており、参加者に好評であった。)
アルゴリズムやデータ主体の分析・意思決定に潜む危険性が紹介され、一例にEthical Matrixを用いて施策の及ぼしかねない悪影響が明確にされた。講演者は数字上でのみ成果を重視してしまう近年の風潮を議論し、とりわけデータやアルゴリズム等の乱用に警鐘を鳴らした。
また、パネル・ディスカッションでは米国での高等教育を取り巻く環境やIR全体の役割が議論され、聴衆が議論に参加できる 機会も多く設けられた。ディスカッション・グループでは参加者が自由に発言し、各々の経験・事例を用いた議論が可能となった。
一例に、学生の意見を知るため、アンケート調査に頼らない学生新聞の購読や学部1年の学生を早い段階から基金関連のイベントに招待してその重要性をアピールすると同時に愛校心を養うなど、IR担当者の様々な工夫が紹介された。
当初、他国の政治的・社会的背景のため、具体的な施策はあまり参考にならないのではないかと危惧したところもあったが、むしろ多国 の状勢・問題を比較・整理することで新たな道筋も見えたと同時に、日本の現状を情報発信・対比することが経験豊富な関係者との交流の種となり活発な意見交換と議論が行えた。総合的にAIR Forum 2018では多くの米国のIR・評価分析の実務担当者と知り合い、情報交換を行うことができ、非常に有意義なイベントであったと。
来年の年次総会はコロラド州デンバーにて5月27日~31日に開催される予定となっており、是非ともまた情報収集と意見交換に訪れたいものである。